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「国連を中心に“持続可能な農業”が呼びかけられている今、日本も有機農業による自給国家を目指すべきです」と語る安田さん。横浜市の自然公園「寺家ふるさと村」で(写真/堀 隆弘)

安田節子さん
食政策センター・ビジョン21代表、NPO法人日本有機農業研究会理事、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト理事、日本の種子を守る会常任幹事。1990~2000年、日本消費者連盟で反原発運動、食の安全と食糧農業問題を担当。1996~2000年、市民団体「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」事務局長を務め、表示や規制を求める全国運動を展開する。2000年に食政策センター・ビジョン21を設立し、情報誌『いのちの講座』を創刊。2009~2013年、埼玉大学非常勤講師。著書に、『私たちは何を食べているのか まともな食べ物がちゃんと手に入らない日本』『食卓の危機 遺伝子組み換え食品と農薬汚染』(共に三和書籍)、『食べものが劣化する日本 命をつむぐ種子と安心な食を次世代へ』(食べもの通信社)などがある。

衝撃のドキュメンタリー番組
「遺伝子組み換え戦争」

 
──ご著書の『食卓の危機』で紹介されていた「遺伝子組み換え戦争」というドキュメンタリー番組は、大変衝撃的な内容ですね。

安田 そのドキュメンタリーは、遺伝子組み換え(GM)大豆の栽培地域で健康被害が増加している実態を、フランス人ジャーナリストが追跡したもので、多国籍アグリビジネス*1の暗躍についても伝えています。2014年にフランスで制作され、日本ではその翌年に「遺伝子組み換え戦争“戦略作物”を巡る闘い 欧vs.米」というタイトルで、NHKの「BS世界のドキュメンタリー」で放映されました。
*1 農業を中心に農産物加工、貯蔵、流通販売、農機具・肥料製造までを含めた産業としての農業

 番組の冒頭から、デンマークとアルゼンチンで引き起こされているGM大豆と除草剤のラウンドアップ*2が原因とみられる健康被害が紹介されるというショッキングな映像で始まります。デンマークの養豚業者が、アルゼンチンから輸入しているGM大豆を飼料として豚に与えていたところ、下痢や原因不明の病気で死ぬ豚が続出したんですが、GM大豆を食べさせるのをやめると、下痢を起こさなくなったことから、これは、GM大豆が原因だと結論するに至ったと語るんですね。
*2 1970年にアメリカの企業、モンサント社(現在はバイエル社)が開発した除草剤

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 その次に、アルゼンチンにおけるGM大豆栽培の実態が伝えられます。アルゼンチンでは、GM大豆畑の面積が2,200万ヘクタールを占めるに至っていて、そんなGM大豆畑に隣接している村では、変性疾患*3にかかる子どもたちが増えていて、農薬が症状を悪化させていると医師が証言するんです。
*3 細胞や組織などが徐々に変質し、やがて死滅・脱落して機能を失う疾患の総称

──その農薬がラウンドアップなんですか。

安田 そうです。GM大豆畑には、トラクターで除草剤のラウンドアップが大量に散布されており、トラクターの横には、ラウンドアップの空の容器がたくさん転がっていて、GM大豆生産農家の人が、「自分の家畜にはGM大豆は与えていない。これをニワトリにやると卵が臭くて食べられなくなるから」といった驚くべき発言をするんです。

 アルゼンチンのGM大豆畑では、ラウンドアップの他にも、農家が、監視の目が届かないところで別の薬剤を混ぜている事例がたくさん目撃されていて、映像ではトラクターの荷台に、EU(欧州連合)が禁止しているアトラジン*4や、ベトナム戦争で先天性異常を多発させた悪名高い枯葉剤の2,4-D*5の容器が載っている様子が映し出されていました。
*4 世界でもっとも多く使われている除草剤
*5 フェノキシ酢酸系のホルモン型除草剤の一種。植物の茎葉、根から吸収され,高濃度の場合には植物を枯死させる

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安田さんの著書『食卓の危機 遺伝子組み換え食品と農薬汚染』(三和書籍)

除草剤の耐性雑草が発生し、
複数の除草剤を撒く結果に

 
──今、ラウンドアップの他に別の薬剤を混ぜるという話がありましたが、それはなぜなんでしょうか。

安田 アルゼンチンでは、広大な農地に年3回ラウンドアップを散布しているんですが、耐性雑草が発生して、ラウンドアップだけでは雑草を駆除できなくなっているからなんです。農家では、ラウンドアップを撒くだけで雑草を枯らすことができると言われて使っていたのに、ラウンドアップを撒くことで、かえって複数の除草剤を大量使用せざるを得なくなるという皮肉な結果になっているんですね。

 こうした農薬の混合使用は、単独で使うより毒性が高まる懸念があるため、本来であればきちんと調べなければならないんです。ところが、ラウンドアップを開発したモンサント社*6(現在は、バイエル社)やダウ・ケミカル社*7と結びつきが強いアルゼンチンの保健省では何もしていませんし、政府の農業研究者も、農薬のそれぞれに単独で発がん性がなければ問題はないと言うばかりです。そのため、アルゼンチンでは、ラウンドアップの効果と安全性を宣伝したテレビCMが頻繁に放映されています。
*6 アメリカの多国籍のバイオ化学メーカー。2018年にドイツのバイエル社に買収・吸収された
*7 アメリカに本社を置く世界最大級の化学メーカー

──実態はどうなんでしょうか。

安田 アルゼンチンのロサリオ国立大学が、GM大豆を栽培している村を回って行った健康調査では、村によっては1年で、40%から6倍以上の250%にがんの発症が急増したという報告がなされています。そうしたがんの発症が増加した村に共通していたのは、周りをGM大豆の畑に囲まれていて、村の近くで農薬が散布されていたということだったのです。

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「フランスの元大統領ド・ゴールは、『独立国家とは食料自給のできる国』という言葉を残しています。国の安全保障とは、軍事力ではありません。食料自給なのです」(写真/堀 隆弘)

ラウンドアップと耐性のGM種子を
セットで販売する戦略

 
──モンサント社とはどういう会社だったんですか。

安田 モンサント社は、GM種子では90%以上を占めるという圧倒的なシェアを誇るバイオ化学メーカーであり農薬化学企業で、除草剤の世界的ベストセラー、ラウンドアップを販売しているアメリカの多国籍企業でした。

 そのモンサント社が開発したのが、主力製品であるラウンドアップに耐性を持つ遺伝子組み換え作物(GMO)です。これがどうしてできたのかというと、ラウンドアップを製造する工場の廃液の中に棲んでいた微生物の中にラウンドアップに耐性を有するものがあったため、その遺伝子を大豆などの作物に遺伝子操作技術を使って導入し、耐性を獲得させたGMOを作り出したんです。

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 ラウンドアップは、植物ならすべて枯らすことができる強力な除草剤なので、作物を栽培している畑には撒くことができません。しかし、ラウンドアップ耐性のGMOなら、ラウンドアップを浴びせても枯れず、雑草だけが枯れるんですね。

 モンサント社は、ラウンドアップ耐性のGM種子とラウンドアップをセットで売るという戦略を展開しました。そのため、ラウンドアップ耐性のGM大豆畑に、大量のラウンドアップが使用されるようになり、特許を取得した価格の高いGM種子とラウンドアップ双方を売ることで、高い利益を上げるようになったんです。

──アルゼンチンは、そうした戦略に巻き込まれたということですね。

安田 モンサント社は、アルゼンチンの経済破綻につけ込んで同国の種子企業を買収し、種子事業を独占してGM大豆種子を持ち込み、政治家、大土地所有者と連携して、アルゼンチンの農地をGM大豆で席巻していったんです。それによって、昔からあった小規模の農業が破壊され、ドキュメンタリーで紹介されたような現状になってしまったんです。

自然からの逆襲
農薬と耐性雑草のいたちごっこ

 
──ラウンドアップ耐性の雑草が生まれたという話がありましたが、世界中でラウンドアップが使われているわけですから、他にも耐性を持つ雑草があるでしょうね。

安田 おっしゃる通りです。アメリカ科学アカデミーの全米研究評議会によると、ラウンドアップの過剰な散布によって、世界中で少なくとも383種類のラウンドアップに耐性を持つ雑草が確認されていて、そのために、ラウンドアップより強い毒性のある除草剤が必要になってきています。

 先ほどのドキュメンタリーでは、アルゼンチンにおいてラウンドアップに加えて毒性の強いアトラジンや2,4-Dが使用されていることが紹介されていましたが、アメリカでは、ラウンドアップ耐性のみならず、複数の除草剤に抵抗性を示す多剤抵抗性雑草が出現し、それらが蔓延して農家を苦しめています。そうした耐性雑草の出現を受け、モンサント社などでは、さらに複数の除草剤に耐性を持つ遺伝子をいくつも導入した、GMOを開発するようになっています。

 しかし、そうしていくら強力な除草剤を開発しても、またそれに対して耐性雑草が生まれるという悪循環を繰り返しており、殺虫剤や除草剤などの農薬、あるいは抗菌剤、抗生物質などを使用すれば、必ず自然界から“耐性の出現”という逆襲を受けるということを如実に示しています。

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 どれほど農薬を散布しても100%雑草を取り除くことはできず、耐性のあるものが一部生き残り、それらが耐性遺伝子を持つ子孫を増やすという、農薬と耐性雑草の“いたちごっこ”が起こっているんですね。

──GMOの中には、その細胞に殺虫毒素が生成されているものがあるそうですね。

安田 ええ。土壌微生物のバチルス・チューリンゲンシスという枯草菌から殺虫毒素(BT毒素)を作る遺伝子を取り出し、作物に遺伝子操作で導入したもので、「殺虫毒素生成」と言われます。例えば、殺虫毒素生成トウモロコシは、茎、葉、実、すべての細胞に殺虫毒素ができていて、アメリカではこのトウモロコシを農薬として登録しています。

 ですからこのトウモロコシを食べた虫は死ぬんですが、中にはこの毒素に耐性を持つ害虫もいて、これらがはびこってしまう。殺虫毒素生成トウモロコシには殺虫剤がいらないという触れ込みだったにもかかわらず、殺虫剤を併用せざるを得なくなり、農薬の使用がかえって増えてしまうというパラドックスに陥ってしまっているんですね。

世界がグリホサート規制に進む中
日本は農薬残留基準を大幅に緩和

 
──世界では、ラウンドアップの主成分であるグリホサートの規制に向かって動いているそうですが。

安田 EUでは、昨年時点で農業用の使用を禁じていますし、ドイツでは、GMOの栽培禁止と2023年末までにグリホサート禁止を決定しています。オーストリアでも、グリホサート全面禁止の法案を可決していますし、オランダ、フランス、スイスではホームセンターでの販売を禁止している他、多くの国々で規制の動きが出ています。

 また2019年には、国際産婦人科連合*8が、グリホサートの世界的廃止を呼びかけました。「化学物質は胎盤を通過する可能性があり、メチル水銀の場合と同様に、胎児に蓄積する可能性があり、長期的な後遺症を引き起こす可能性がある」として、予防原則*9に立って、グリホサート禁止を求める勧告を出したのです。
*8 世界各国の産婦人科学会を下部組織とした連合体。1954年創立
*9 化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方

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──日本はどうなんでしょうか。

安田 残念ながら日本では、グリホサートを禁止するどころか、輸入を続けるために、残留基準値を緩め続けています。

 また、モンサント社は、ラウンドアップに一部の雑草が耐性を持つようになって効かなくなってきたため、別の除草剤ジカンバと共に使用することができるGM種子を開発しました。しかし、ジカンバは、散布後に気化し、上昇して遠くまで漂流するため、ジカンバ耐性GMOではない作物の畑に到達して、その作物を枯らしてしまうという弊害が生じました。

 2018年にアメリカの農家では、約5千万エーカーのGM大豆と綿花にジカンバを散布した影響で、約100万エーカーの非GM大豆が損傷を受けました。それによって、ジカンバの被害を受けた農家とジカンバを散布するGM作物栽培農家との争いがあちこちで起こり、アーカンソー州で農夫が隣人に撃たれて殺害されるという事件が発生しました。

 2018年にモンサント社を買収したバイエル社には、ジカンバ被害の訴訟が降りかかっています。

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──そうした問題のあるジカンバ耐性大豆に、日本はどう対応しているんでしょうか。

安田 日本では、アメリカのジカンバ耐性大豆の生産状況に合わせて、2013年、2014年、2016年、2018年とジカンバ耐性GM大豆の品種を認可し続けています。これは、ジカンバを浴びても枯れない大豆ですから、当然大豆にジカンバが残留しているにもかかわらず、ジカンバ耐性GMOを輸入し続けるために、日本は、2013年に大豆のジカンバ残留基準をそれまでの0.05ppmから、なんと200倍の10.0ppmに緩和したのです。アメリカの基準、10.0ppmに合わせたんですね。

──驚くべき話ですね。

安田 人の健康を損なわないよう科学的に決められたはずの残留基準値が、政治的な配慮によって大幅に緩められる現状を見ると、食品安全委員会*10などしょせん飾りものに過ぎないということがよく分かります。恣意的数値によって安全を偽装しているだけだと言わざるを得ません。
*10 食品安全基本法の制定により2003年7月に内閣府に設置された行政機関

GMO消費大国、
農薬漬けの日本

 
──食料の自給率(カロリーベース)が37%と、先進国で最低のランクの日本は、農産物の輸入に頼らざるを得ないわけですが、GMO輸入の現状はどうなんでしょうか。

安田 日本はGMOの栽培国ではありませんが、アメリカからGM大豆の輸出が始まった1996年以降、毎年大量のGMOをアメリカ、カナダなどから輸入し、2016年には年間2千万トン以上というGM作物の輸入大国です。それだけにとどまらず、日本はGM品種の認可数が309で、アメリカの197よりも多く、世界一なんですね。

 一方、日本が認可したGM作物は9つありますが、流通しているのは、大豆、トウモロコシ、綿実(めんじつ)、ナタネの4種類です。これらの作物の主要輸出国であるアメリカ、カナダなどでは、GM品種が高い割合で生産されていて、日本に輸出されるこれらの作物の9割ほどが、GM品種です。

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 4種類のGM作物は、主に食用油になり、食用油はマーガリンやドレッシング、マヨネーズなど多様な食品の原料になり、トウモロコシや油を絞った後の脱脂大豆は、家畜の飼料に多く使われています。

──多くの食品にGMOが使われているわけですが、スーパーなどで表示を見ても、「遺伝子組み換え使用」と表示されているものがほとんどないのは、どうしてなんでしょうか。

安田 そうですよね。そのために日本はGMO消費大国だと言われてもピンとこない人が多いかもしれませんが、実は、これには食品表示の“マジック”があるんです。

 日本の食品表示は、食品表示法*11などによって規定されています。しかし、残念ながらおよそ消費者目線に立ったものとは言いがたいというのが現状です。
*11 2015年に施行された「JAS法」「食品衛生法」「健康増進法」の3法の食品表示に関する規定を整理、統合したもの

 具体的に言いますと、GMO表示義務のある食品は、豆腐、味噌、納豆程度で、加工食品に至っては、多くの遺伝子組み換え作物が使われているにもかかわらず、原材料の重量比上位3品目、かつ原材料の重量に占める割合が5%以上であるものしか表示しなくていいことになっています。そのため、加工食品に使用されている大豆レシチン、コーンスターチやマーガリン、ショートニングなどの表示義務はないんです。

 同じく加工食品によく見かける、でんぷん、トレハロース、アミノ酸、乳化剤、醸造アルコールなどの添加物は、遺伝子組み換えである可能性が高いんですが、これらが重量の5%以上を占めることは通常あり得ないので、表示義務はありません*12
*12 分別生産流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混ざっている割合が5%以下の場合は、適切に分別生産流通管理を行っているという、事実に即した表示を義務付けている

 日本がいかにGMO消費大国、農薬漬けになっているかが、お分かりいただけると思います。

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「農は国の基」とする
農本主義に帰る

 
──そうした現状を変えていくには、どうしたらいいとお考えですか。

安田 先ほど話がありましたように、2019年時点で、日本の食料自給率(カロリーベース)は37%と先進国中最低で、穀物自給率に至ってはもっと低い28%でしかありません。米は自給率がほぼ100%ですが、大豆は4%、トウモロコシ0%、小麦11%、ナタネ0.4%という具合で、米以外のほとんどを輸入に頼っているという現状にあります。

 このような話をすると、日本は工業立国であり、技術や自動車、工業製品を輸出し、その代わりに食料を安い輸入に依存して何がいけないのか、とおっしゃる方がいるのですが、自国の食料を外国に依存しなくてはならない国にどんな未来があるというのでしょうか。

 現在、異常気象が頻発する中で、日本に大量の食料を輸出している国々が、将来にわたって安定的に輸出を続けられる保証はありません。また、今回のコロナのようにパンデミックが起きれば、物流が止まって食料価格が跳ね上がり、貧しい人たちが真っ先に被害を受けます。

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 それより何より、穀物などの基本的な食料を外国に依存することは、国民の命を外国に委ねてしまうのと同じで、それは独立国家ではなくなることを意味します。

 これから私たちが目指すべき方向は、多国籍企業の略奪的資本主義の餌食にされるのではなく、きっぱりと対米従属から決別し、真の独立国家として立てるよう、私たちの命を養う基本的食料は日本の大地から安定的に生産されるように、農業を国家の土台、基礎にしていくことが重要だと思います。

──「原点に帰る」ということでしょうか。

安田 私が言いたいのは、「農は国の基(もと)」とする農本主義に帰らなければならないということです。そして、これからの農本主義は、有機農業を土台に据えるものでなければならないと考えています。農薬や化学肥料、遺伝子組み換えとは一線を画す有機農業は、海外諸国では消費者の強い支持を受けて、有機農業面積が急速に拡大していますが、そんな中にあって日本は、0.4%と低迷したまままです。

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 そうした中、どうやったら日本で有機農業を増やすことができるのかと言いますと、私は学校給食を有機に変えることが突破口になると考えています。地元の有機農産物を学校給食に取り入れ、有機給食とするのです。有機農産物による地産地消の学校給食が実現すれば、子どもたちに新鮮で安全な食事を提供し、健康を支えるという食育ができますし、有機農家は安定した出荷先が得られて収入も確保できます。

 そうすれば有機生産者も増えて、地域の有機面積が拡大し、その結果、環境保全も進んできれいな空気、水、豊かな生物が戻ってきます。そうした美しい里山を次世代に残すことができたなら、子どもたちはふるさとを誇りにしてくれると思います。

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「私たちが遺伝子組み換えや農薬に汚染された作物や食品を、買わない、食べないという選択をすることで世の中が変わっていきます。消費者の選択は大切な1票なんです」(写真/堀 隆弘)

──学校給食を無償にすることが必要だとおっしゃってましたね。

安田 それがとても大事だと思います。有償だと、どうしてもできるだけ給食費を安くしたいという意識が働いて、輸入小麦使用のパンやGM大豆食品の使用につながってしまうからです。学校給食を税金でまかなう公共事業として位置づけ、給食は未来の子どもたちへの投資と考えてほしいのです。

 今、日本は“曲がり角”にいます。日本を農薬天国、GMO大国のままにしていては滅びてしまいます。今こそ、本気で有機農業国に転換していかなければならないと思います。

聞き手/遠藤勝彦(本誌)