「お母さん、テニス部を辞めたい」
思いつめた表情で長女がそう言ったのは、高校1年生の秋のことでした。
私自身、中学、高校とバスケットボール部の活動を通して、一生つき合える友達を得たり、チームワークの大切さなどを学んだので、部活を辞めるというのは、考えられないことでした。
長女はまじめで責任感があり、何事もきちんとやる性格でした。小学校の時は、障がいのある友達のお世話をする機会をいただき、中学校に入学してからは、その友達と一緒にクラスの役員となって頑張りました。高校受験も懸命に勉強して、志望校に合格することができ、入学後も部活と並行して、予習や復習に取り組んでいました。そんな姿から、充実した高校生活を送っているとばかり思っていたのです。
部活内での人間関係に悩んだり、いじめがあったりしたわけでもなく、練習が厳しかったという話も聞いたことがありませんでした。部活を辞めるという決断は、ただそこから逃れたいという思いからだったようです。しかし当時の私は、長女の気持ちを理解してあげられませんでした。
長女は「私はいつまで頑張り続けなきゃいけないの?」と言いました。長女なりに部活も勉強も頑張っているのに、結果が出ないことに苛立っている様子で、確かに勉強の面においては、定期テストではよい成績を取っていたものの、夏休み明けの実力テストは今ひとつでした。部活でも上手な人が優遇され、実力のある順にA、B、Cとランク分けされていたそうです。これは部員のモチベーションを上げるためだと思いますが、長女にとってはプレッシャーとなり、これ以上頑張ることができないと諦めてしまったのです。
長女が部活を辞めたいと夫に伝えると、「そんなの、嫌だったら辞めたらいい」と言いました。夫は部活をやってこなかったから、そんなことが言えるのだと思いました。
長女がテニス部の顧問に退部の意思を伝えると、逆に説得されて残ることになりました。「お母さん、部活続けることにしたから」とすっきりした顔の長女を見て、私はホッとしました。
その時は思い留まったものの、高校2年の春、再び退部の申し出をしました。しかし、長女が辞めるとダブルスのパートナーも試合に出られなくなるからと、すでに選手登録がされていた夏の大会まで部活を続け、この大会を最後に長女はテニス部を辞めました。そしてその夏休みは、溜め込んでいたストレスを発散させるかのように、毎日夜遊びをするようになったのです。
生活が乱れていく長女を案じて
今はSNSを介していろんな人とつながることができます。長女がどこで誰と会っているのかも分からず、私がスマホでメッセージを送っても「既読」にならないこともありました。トラブルに巻き込まれたのではないかと不安でたまらず、長女の返信を寝ないで待っていることもありました。
服装は次第に派手になり、髪を染めたり、ピアスを開けたりしました。新学期が始まると夜遊びは少し落ち着いたものの、夜遅くまでスマホを触っていました。そのため朝は起きられず、学校を休みがちになりました。
勉強も1学期の期末試験が終わってから、まったくしなくなりました。長女は勉強の遅れくらいすぐに取り戻せると言って高を括っていましたが、授業についていけなくなり、ますます学校へ足が向かなくなりました。
夫や母から「今日は学校へ行ったのか?」と尋ねられたりするたびに、私は自分が責められているように感じました。学校へ行けなくなるような子に育てたのは私のせいだと思い、相談することもできませんでした。長女の将来を考えると心配で、母が信仰する生長の家の教えを、私も真剣に学ぼうと思ったのでした。(つづく)