コロナ禍に自転車利用が拡大

 新型コロナウイルス感染症拡大により、私たちの生活様式は大きく変わりました。ある保険会社が、東京都在住の自転車通勤者500人を対象に調査したところ、「新型コロナウイルス感染症拡大後に自転車通勤を始めた」と答えた人は、全体の23%を占めたそうです(*1)。その理由に「公共交通機関での通勤を避けるため」をはじめ、「運動不足解消」や「ストレス解消」などが挙げられています。

 生長の家でも、「省資源、低炭素の生活法」の普及のために「SNI自転車部」というグループをつくり、自転車の利用を呼びかけています。自転車利用のメリットは幾つかありますが、私は以下の2点が重要だと考えます。

  • 心身の健康を促進する
  • 低炭素のライフスタイルを実現する


 前述の調査結果は、自転車に乗ることが「心身の健康を促進する」のに有効であり、すでに多くの人がそれを認め、実行していることを示しています。このような個人的なメリットとともに重要なのは、「低炭素のライフスタイルを実現する」ことにあります。 

 また、そのような人が増えることが、巡り巡って環境問題の解決、ひいては世界平和実現に貢献することに繋がると考えます。なぜならば、平和・環境・資源の問題は密接につながっているからです。

ウクライナ危機は「気候戦争」

 現在、ロシアによるウクライナに対する不法な軍事侵攻が問題となっています。経済思想家の斎藤幸平氏は、「気候戦争としてウクライナ侵略を読み解く」(*2)(AERA dot.)のなかで、これを「気候戦争」であるとし、「今回の戦争はNATOの東方拡大阻止という最重要課題への対応であるとともに、気候危機への適応戦略の一環」と見るべきであると指摘しています。

 気温上昇によって干ばつや豪雨などが多発し、食糧や水など生存のための条件が危うくなる「気候危機」により、砂漠化や永久凍土の融解などの脅威に直面しているロシアにとって、肥沃な穀倉地帯であり、天然資源にも恵まれたウクライナは、喉から手が出るほど重要な存在だというのです。

 同様のことが、かつてシリアでも起こったと斎藤氏は指摘し、「シリアの難民問題を生むことになった内戦やアフガニスタンでのタリバーン復権がそうで、気候危機の影響による干ばつで多くの人々が困窮した結果、政治的に不安定になった」と述べています。つまり、気候変動という「環境」問題が、「平和」を脅かす事象としてすでに起こっているのです。さらに斎藤氏は、「今後、気候変動が深刻化するなかで、水、食糧、資源、エネルギーをめぐる紛争や戦争の火種は増えていく」と警鐘を鳴らしています。

私たちにできること


 気候変動の原因は、石油などの地下資源を大量に消費する現代人のライフスタイルにありますから、戦争の原因の一端が私たちの生活にあることになります。多くの人がその事実を知って、驚くとともに良心が痛むのではないでしょうか。この良心こそが、“神の子”の本性の声です。

 では、良心に従った生活とは何か?といえば、低炭素のライフスタイルを実践することであり、その具体策の一つが、自転車を利用することなのです。つまり、日常生活において自動車で移動していたところを、移動に伴う温室効果ガスを排出しない自転車に代えてみませんか? ということです。

 この特集では、世界各国の生長の家の信徒が、信仰に基づき積極的に自転車を活用している様子が紹介されています。これは実践した人が「楽しい!」と思えるのと同時に、世界平和に貢献できる取り組みです。

 コロナを機に多くの人々がライフスタイルを見直している今、“神の子”の自覚を深め、良心を実生活の中で表現していきましょう。

*1 「〜東京都の「自転車通勤」に新型コロナが与えた影響を調査〜」(au損害保険公式サイト)参照
*2 「気候戦争としてウクライナ侵略を読み解く」経済思想家・斎藤幸平(AERA dot.)参照

松井雅永
生長の家本部講師
生長の家徳島教区教化部長。趣味は自転車。ウクライナ危機に際し、獲得標高に応じて募金する「ウクライナ支援ライド」を敢行中。