A.K.(50代)
鹿児島県屋久島町
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私は7人きょうだいの長女として生まれました。両親は生長の家の教えを熱心に信仰していて、幼い頃から「人間は神の子であり、無限力がある」と教えられて育ちました。
高校を卒業後、就職のために生まれ育った屋久島を離れ、鹿児島市で暮らし始めました。ところが、職場の人間関係に悩み、1年足らずで島に戻ることになってしまったのです。

精神科や心療内科が現在ほど一般的でなかったので、通院することはありませんでしたが、今思えばうつ病のような状態だったのかもしれません。何事にもやる気が起きず、自分を追い詰めた人を恨み、逃げ帰った自分のことも責め続けていました。
そんな私を、両親は一所懸命に祈り続けてくれました。そして、京都の生長の家宇治別格本山*1で行われている10日間の練成会*2に参加するよう勧めてくれたのです。
*1 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある
*2 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
初日だけ父が付き添ってくれましたが、父が帰ってしまうと不安に押しつぶされ、道場を飛び出してしまいました。けれども、どうやって家に帰ったらいいのか分からず、交番に助けを求めて再び練成道場へ戻りました。

気乗りしないまま行事に参加していましたが、日が経つにつれて「そのままで神の子である」「実相*3円満完全」という言葉が私の心にすっと入ってきました。すると少しずつ気持ちが明るくなり、元気を取り戻していきました。
*3 神によって創られたままの完全円満なすがた
練成会で行われた浄心行*4では、私を思って祈ってくれていた両親のことが心に浮かびました。両親やご先祖様、そして神様に護られていると思うとありがたく、「お父さん、ありがとうございます! お母さん、ありがとうございます!」と、大きな声で繰り返し唱えました。すると、心を覆っていた霧が晴れ、苦しさから救われました。以来、生長の家の教えが、私の心の支えになりました。
*4 過去に抱いた悪感情や悪想念を紙に書き、生長の家のお経『甘露の法雨』の読誦の中でその紙を焼却し、心を浄める行
良くなってほしいから叱ってしまう
その後、23歳で結婚し、3人の男の子に恵まれましたが、長男は幼い頃から落ち着きがなく、人の話を聞いているのか分からないような子どもでした。生長の家の教育法は、子どもの美点を褒めて、伸ばすものだと分かっていましたが、「悪いことを悪いと教えるのが親の務め」だと思い、長男を厳しく叱りました。
ところが、叱れば叱るほど長男は反発し、言うことを聞かなくなりました。私は「正しいことを言っているはずなのに、なぜこんなに反発するのだろう」と悩みました。長男は学校の成績も中くらいで友達も多く、本当は良い面もたくさんあったのに、私はそういったことには目を向けず、悪いところを見つけては叱ってばかりだったのです。

高校卒業後、長男は就職しましたが、その頃からパチンコにのめり込み、いくら注意しても聞く耳を持たなくなりました。次第に給料のほとんどをパチンコにつぎ込み、私たちにお金を無心するようになりました。普段は子育てに口を出さない夫も、このときばかりは長男をきつく叱りました。
そんなある日、金融会社から催促状が届き、長男は借金をしてまでパチンコを続けていたことが発覚しました。パチンコで作った借金をパチンコで返そうと考えていたようですが、うまくいくはずもありません。やむなく私が借金の肩代わりをし、ときには実家の両親にも頼って、なんとか乗り切ったこともありました。
「そのままで神の子」と信じる
この問題を解決できるのは生長の家の教えしかないと思い、毎朝の神想観*5の中で長男の実相が顕れるように祈りました。長男の良い部分を見つめて、心の中で「長男は神の子、完全円満」と唱え続けました。
*5 生長の家独得の座禅的瞑想法
しかし、現実はなかなか変わりませんでした。肩代わりして借金を整理しても、長男は借金を繰り返すのです。こんなにも心を込めて祈っているのに、どうして長男は変わらないのだろうと途方に暮れました。

それでも、「私にできることは祈ること」と思い直し、毎朝神想観を続けました。祈っているうちに、「親に充分愛されなかった心の空白を埋めるために、パチンコ通いから抜け出せないのではないか。私がもっと愛情を表現できていればよかった」と感じるようになったのです。
生長の家では、「和顔・愛語・讃嘆」を大切にしています。和やかな笑顔と、思いやりのある優しい言葉で褒めること、それこそが生長の家の生き方であり教育法なのに、私は長男に真逆のことをしていたと反省しました。
そして、私が19歳のときに参加した宇治別格本山の練成会で繰り返し耳にした「そのままで素晴らしい神の子である」「実相円満完全」という言葉が思い出されました。長男はそのままで神の子なのに、「良くなってほしい」と願う私の心こそ問題だったのだ、とようやく気づいたのです。

長男の良い面が見えるように
長男はそのことを私に教えるために、あのような姿を現していたのだと思うと、申し訳なさと感謝の思いで胸がいっぱいになりました。そして、その日から神想観の中で唱える言葉が変わりました。
「生まれてきてくれてありがとう!」「これから毎日あらゆる点で一層良くなる! ますます良くなる! 必ず良くなる!」と、感謝の言葉と、明るく前向きな言葉を唱えるようになったのです。

すると、いつの間にか長男のパチンコ通いはピタリと止まりました。借金も毎月の給料から少しずつ返済しはじめ、残ったお金で生活をやりくりするようになりました。
ある日、仕事を終えた長男から「今から帰る」と電話がありました。そのとき、長男への愛おしさが込み上げてきて、「愛しているよ」と思わず口にしていました。長男は照れくさそうにしていましたが、自分でも思いがけない言葉に涙が溢れてきました。

私の心が変わると、長男の良い面ばかりが見えるようになりました。あれだけパチンコにのめり込んでいたときでさえ、仕事を辞めることなく、長男なりに生活を立て直そうと努力していたのだと思えるようになったのです。
今は次男も三男も家を離れ、夫と長男の3人で暮らしています。家族の時間、親子のつながりを少しずつ取り戻しながら、感謝の毎日を送りたいと思っています。





