長野県伊那市で農業を営む齊藤健一さんは、3年ほど前から趣味で水彩画を習い始め、毎日のようにふるさとの風景を描いて、フェイスブックに投稿している。
「近所の山道を散歩したりするとき、その合間を縫って目に付いた風景を描いているんですが、同じコースを歩いても、見える風景は日によってそれぞれに違うんです。絵を描くことで、生まれ育った土地の自然の美しさに初めて気づいたように思います」
天候が良い日だけに限らず、雨が降っても軽トラックで出かけ、運転席で絵筆を執る。水彩画が主だが、雨の日には、水に強いアクリル絵の具を使って描く。
主に葉書サイズの画用紙に鉛筆で下書きし、その後、水彩やアクリルを使って色を付けて仕上げる。制作時間はわずか約15分。
完成した絵は、その日のうちにフェイスブックに投稿し、多くの人の目を楽しませている。
「皆さんから寄せられるコメントや『いいね!』が、大きな励みになっています。今は絵を描くのが生活の一部になり、人生がすごく豊かになったと感じています」
柔和な笑顔を浮かべて話す齊藤さんは、市役所に勤めていた40代の頃、多忙な仕事のストレスで心身に不調を来したことがあった。そんなとき、ある雑誌に生長の家のことが紹介されていた。
大学時代に父親の勧めで生長の家富士河口湖練成道場(*1)の練成会(*2)に参加して感動したことをふと思い出し、真剣に教えを学んでみようと、『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、全40巻。日本教文社刊)などの書籍を読むようになった。
「『人間は本来円満完全な神の子である』と書かれているのを読んで、自分の力で心身の不調を治そうと思っていたのは間違いだった。病気を治すも治さないもない、私はそのままで完全円満な神の子だったと思えるようになり、本当に心が楽になったんです」
しばらくすると、心身の不調は回復し、60歳の定年まで無事勤め上げた。退職後は、農業の傍ら相愛会(*3)の一員として伝道活動を行うとともに、知人に誘われて仏像彫刻を始めた。3年前から、別の知人に勧められて水彩画に転じ、今は絵を描くことに専念している。
「『大自然讃歌』(生長の家総裁・谷口雅宣著、生長の家刊)には、自然と人間は一体であると説かれていますが、絵を描いていると、そのことを実感します。散歩するときは、山道の途中にある大きなモミの木に、いつも話しかけているんですよ。これからも自然と対話しながら、楽しんで絵を描き続けていきたいと思います」
そう言って、齊藤さんは、さらさらと画用紙に絵筆を走らせた。
*1=山梨県南都留郡富士河口湖町にある生長の家の施設
*2=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践する集い
*3=生長の家の男性の組織