鬼頭昭雄(きとう・あきお)さん(気象業務支援センター研究員) 聞き手/遠藤勝彦(本誌)写真/堀 隆弘 鬼頭昭雄さんのプロフィール 1953年大阪府生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程中退。専門は気候変動、モンスーン。気象庁気象研究所気候研究部部長、筑波大学生命環境系主幹研究員を経て、現在、(一財)気象業務支援センター研究推進部研究員、気象庁気象研究所客員研究員を兼務。約30年にわたり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第2次~第5次評価報告書及び第2作業部会第6次評価報告書の執筆責任者を務める。著書に『気候は変えられるか?』(ウェッジ)、『異常気象と地球温暖化─未来に何が待っているか』(岩波新書)、『変わりゆく気候 気象のしくみと温暖化』(NHK出版)がある。

鬼頭昭雄(きとう・あきお)さん(気象業務支援センター研究員)
気候変動、モンスーンの専門家として、約30年にわたり、IPCC評価報告書の執筆責任者を務めてきた鬼頭さん

聞き手/遠藤勝彦(本誌)写真/堀 隆弘

鬼頭昭雄さんのプロフィール
1953年大阪府生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程中退。専門は気候変動、モンスーン。気象庁気象研究所気候研究部部長、筑波大学生命環境系主幹研究員を経て、現在、(一財)気象業務支援センター研究推進部研究員、気象庁気象研究所客員研究員を兼務。約30年にわたり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第2次~第5次評価報告書及び第2作業部会第6次評価報告書の執筆責任者を務める。著書に『気候は変えられるか?』(ウェッジ)、『異常気象と地球温暖化─未来に何が待っているか』(岩波新書)、『変わりゆく気候 気象のしくみと温暖化』(NHK出版)がある。

平年値に基づいて行われる異常気象の判断

──初歩的な質問で恐縮ですが、異常気象とはどういうものなのかについて教えていただけますか。

鬼頭 異常気象とは、一般的に、過去に経験した現象から大きく外れたもので、人が一生の間にまれにしか経験しない現象のことを言います。異常気象には、数時間程度の大雨、強風などの激しい気象や天気の異常から、数カ月も続く干ばつ、極端な冷夏といった気候の異常も含まれます。

 この場合の気候とは、長期にわたる気象の平均のことをいい、気象庁では、気温や降水量などの異常を判断する場合、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において、30年間に1回以下の頻度で発生する現象」のことを異常気象と定義しています。

 異常気象であるか、そうでないかを判断するときの基準は、「平年値」に基づいて行われ、現在、気象庁が使っている平年値は、1981年から2010年の30年間の平均です。

 なぜ、30年間なのかと言うと、世界気象機関によれば、年々の変動を除去できるほど充分長く、かつ長期的な変化傾向を表すのに充分短いということで、30年間とされています。この30年間というのはほぼ1世代で、私たちの記憶にある過去の範囲に相当するものでもあるわけです。

──年値は、10年ごとに改訂されるということですね。

データを示しながら、地球温暖化と異常気象の関連性について説明する鬼頭さん

データを示しながら、地球温暖化と異常気象の関連性について説明する鬼頭さん

鬼頭 そうです。今は2020年ですから、来年2021年からは、1991年から2020年までの30年間の平均を平年値とするわけです。

 現在は1981年から2010年の30年間をベースに、それぞれの地点における観測データを平年値として使い、その30年間の平年値を超えるものを異常気象と言うんです。ですから「30年間に1回以下の頻度で発生する現象」という気象庁の定義に従えば、異常気象は、いつの時代にも起こり得るものということになります。

異常気象をもたらすジェット気流とエルニーニョ現象

──ご著書の『変わりゆく気候』では、異常気象の原因として「ジェット気流」と「エルニーニョ現象」が挙げられています。これについて教えていただけますか。

inoti129_rupo_2鬼頭 ジェット気流は、1920年代、日本の気象学者で当時の高層気象台長だった大石和三郎氏が発見したもので、日本の上空、高度十数キロメートルくらいの対流圏上層のところでほぼ一年を通して吹く、世界で最も強い偏西風のことです。

 ただ、ジェット気流は、西から東へ直線的に流れているわけではなく、海陸分布や山岳などの影響を受けて南北のどちらかへずれ、蛇行する性質を持っています。それによって、ジェット気流が日本の上空で南西から北東へ向かうときは、南から暖かい湿った空気が流れてくるので天気が悪くなり、逆に北西から南東へ向かうときは、北からの冷たい乾燥した空気が流れてくるため、天気が良くなるんです。

 つまり、日本の上空で低気圧と高気圧が行ったり来たりすることで日々の天気が変わってくるんですが、時によって、この行ったり来たりがなく、高気圧や低気圧が一週間、一カ月続いたりすることがあります。毎日、高気圧に覆われて雨が降らない、あるいは逆に雨が降り続けて大雨になり、それが異常気象に繋がったりするので、ジェット気流がどのような振舞いをするかが非常に大きい。その意味で、ジェット気流は日本の天候に大きな影響を与えるものと言っていいでしょう。

──エルニーニョ現象についてはどうですか。

inoti129_rupo_4鬼頭 数年に一度、太平洋赤道海域で、南米のペルー沿岸から日付変更線にかけての広い海域で、海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が一年近く続くことをエルニーニョ現象(エルニーニョ南方振動)と言います。このエルニーニョ現象によって、西太平洋熱帯域の海面水温が低下し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動が不活発となるため、日本では、夏季は太平洋高気圧の張り出しが弱くなって、気温が低く、降水量が多くなるなど、世界の天候にもさまざまな影響を与えています。

 1987年から翌年にかけて、記録に残る大規模なエルニーニョ現象が発生したときには、東南アジア、インドネシア、オーストラリアが大干ばつに見舞われました。

平均気温の上昇とヒートアイランド現象

──現在、夏に猛暑日(35℃を超えた日)が続くなど、日本では異常高温の夏が続いていますが、今、世界や日本の平均気温はどうなっているんでしょうか。

鬼頭 下の「世界と日本の年平均気温の変化」を見てください。世界では2016年、日本では2019年が年平均気温のピークとなっていますが、全体として徐々に気温が上がっていることが見てとれ、地球規模で温暖化が進んでいることが分かります。

 日本の場合、細かい変動を繰り返しながら長期的に平均気温が上昇し、100年あたり1.14℃上がっています。気温変化の割合は季節によって異なり、それぞれ100年あたり冬は1.15℃、春は1.28℃、夏は1.05℃、秋は1.19℃の割合で上昇しています。なぜ、春の気温上昇が最大になっているのかは興味深い問題ですが、まだ解明されていません。また、日本近海の年平均海面水温は、100年あたり1.08℃の上昇と、平均気温の変化とほぼ同じ傾向を示しています。

 この間、世界の平均気温は、100年あたり0.69℃の上昇でしたので、日本の平均気温(1.14℃)の上昇率は、世界平均の約1.5倍と高いことが分かります。

──平均気温上昇の大きな原因の一つに、「ヒートアイランド現象」が挙げられると思います。これについて教えていただけますか。

inoti129_rupo_5鬼頭 ヒートアイランド現象とは、人間活動の影響、つまり都市がなかったと仮定したときに観測されるであろう気温に比べ、都市の気温が高くなることを言い、地図上に等温線を描くと、高温域が都市を中心に島状に分布することから、ヒートアイランド(熱の島)と呼ばれるようになりました。

 現に日本の主要都市の8月の平均気温は、100年あたり約2.0~2.5℃の割合で上昇しており、都市化の影響が少ないと見られる15地点(網走、山形、銚子、彦根、宮崎、石垣島など)の約1℃に比べると、かなり高いことが分かります。

 なぜ、都市の気温が高いのかと言うと、それには、大きく3つの理由があります。1つ目としては、都市にはアスファルトの道路だったり、コンクリートの建物、住居が多く、林や草地、農耕地などの地面が少ないということが挙げられます。

 草木とコンクリートを比べたときの一番の違いは、地面から出てくる水分の量です。草地や森だと、ある程度地面に水分があって水が蒸発していき、そのとき、潜熱と言って熱を奪ってくれるので、気温を下げる効果があります。しかし、地面がコンクリートで覆われていると、水分が全然ないので蒸発が起こらないのです。そのため、蒸発した気化熱によって気温が下がる効果が全くないわけです。

inoti129_rupo_6 2つ目は、建物、特に高層建築があると、建物自体が日中に熱を壁に吸収して溜め込み、夜になるとその熱を外へ出すので、夜、気温が下がりにくくなるんです。3つ目は、エアコン、自動車からの排熱などさまざまな人間活動によって生じる熱ということですね。

──実際、都市部ではどれくらい気温が上がっているんでしょう?

鬼頭 東京や名古屋、大阪といった大都市の過去100年の気温上昇を見ると、例えば、東京では3℃ぐらい上昇しています。その内の1℃が地球温暖化の影響、残りの2℃はヒートアイランド現象によるものと言われているので、ヒートアイランド現象は、都市に非常に大きな影響をもたらしています。

フェーン現象が引き起こす異常な高温

──高温をもたらすもう一つの原因に、よく「フェーン現象」があると言われますね。

inoti129_rupo_7鬼頭 国内の歴代最高気温は、今年(2020)8月17日、2018年7月23日、それぞれ静岡県浜松市、埼玉県熊谷市で記録された41.1℃ですが、こうした極端な高温現象には、フェーン現象が関わっています。

 風が吹いて山にぶつかると、風は山の斜面に沿って上昇し、山を越えた後は、また斜面に沿って山を下ります。湿った空気が山を越えて反対側に吹き下りたときに、風下側で吹く乾いた風のことをフェーンと言い、そのために付近の気温が上昇することをフェーン現象と呼びます。

 その仕組みを説明すると、乾いた空気の塊が、何らかの理由で大気中を上昇すると気温が下がります。気温が下がる割合は、100メートルの上昇につき約1℃で、乾いた空気の塊が下降すると、同じ割合で気温が上がるんです。

inoti129_rupo_8 実際の空気には、ある程度の水蒸気が含まれているんですが、大気中に含み得る最大の水蒸気量は決まっていて、これを飽和水蒸気量と言います。気温が高いほど飽和水蒸気量が多くなり、気温が1℃上がるごとに約7%増え、実際に含まれている水蒸気量と飽和水蒸気量の比率が、一般に言う湿度(正確には相対湿度)ということなんです。

 飽和した空気が上昇して気温が下がると、水蒸気が水になり、熱を出します。そのため100メートルにつき0.5℃しか下がりません。逆に、乾いた空気の塊が山を吹き下りるときは、乾いた空気のため、100メートルにつき約1℃の割合で気温を上げながら吹き下がるわけです。例えば、湿った空気が山を1,000メートル吹き上がりながら雨を降らせると気温が5℃下がり、その後、山の反対側で乾いた空気が1,000メートル吹き下りると、10℃気温が上がるんです。

 この差によって山の風下側では、気温が5℃上がることになるわけで、こうしたフェーン現象によって、先ほど言った41℃を超えるような異常な高温が引き起こされるんですね。

スーパーコンピュータによる気候変動の予測

──「世界と日本の年平均気温の変化」の図で、全体として、次第に気温が上昇する傾向にあることが分かりましたが、21世紀には、地球温暖化と気温の上昇はどうなっていくと予測されるんでしょうか。

IPCC評価報告書をめくり、研究に余念のない日々を送る鬼頭さん

IPCC評価報告書をめくり、研究に余念のない日々を送る鬼頭さん

鬼頭 大気、海洋、地表面、雪氷などからなる地球の気候システムは、常に変動しており、その上に加わる温室効果ガスなどの人為的な強制によって変わりつつありますが、地球そのものの模型を使って実験することはできません。そのため、気候システムの将来の変化を予測するには、気候システムをスーパーコンピュータの中で再現し、数値的なシミュレーションを行うわけです。

 こうしたスーパーコンピュータの中で、擬似的な地球を再現する計算プログラムのことを「気候モデル」と言い、世界にはいくつもの研究機関があって、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書(2013年〜2014年)では、約40の気候モデルによる予測が使われました。

──具体的には、どんなことを勘案して予測するんですか。

鬼頭 数十年先といった将来の気候を予測するためには、その時点までに、二酸化炭素などの温室効果ガスの大気中の濃度がどうなっていくか、エーロゾル(空気中に浮遊するちりなどの固体や液体の粒子のこと)の量や分布はどうなるか、森林や草地が耕作地に変わるなどの土地利用がどう変化していくか、といった気候システムの外部条件が必要です。

 特に温室効果ガスの排出量は、人口、経済活動、人々のライフスタイル、エネルギー使用量、技術発展を踏まえ、温室効果ガス削減に向け、国としてどのような気候政策をとるのかによって大きく異なってきます。

 そのため、気候変動の予測を行うには、放射強制力(地球温暖化を引き起こす効果。以下、強制力)をもたらす大気中の温室効果ガス濃度やエーロゾルの量がどのように変化するかのシナリオ(仮定)を作らなければならないわけです。

気候モデルで予測された世界平均気温の変化のシナリオ

──そのシナリオとはどのようなものですか。

鬼頭 IPCC第5次評価報告書が使った代表的なシナリオは、①低位安定化シナリオ、②中位安定化シナリオ、③高位安定化シナリオ、④高位参照シナリオの4つです。

 これらは代表的濃度経路(RCP)と呼ばれ、4つの異なる将来における温室効果ガスの排出量と大気中濃度、エーロゾルなどの大気汚染物質の排出量、及び土地利用の21世紀中の変化を表しています。

 具体的に言うと、①~③の安定化シナリオは、21世紀の気候政策を考えたもので、①は強制力の大きさが2100年までにピークを迎え、その後減少するシナリオ、②は強制力の大きさが2100年までにピークを迎え、その後安定するシナリオ、③は2100年まで強制力の大きさが増え続けるシナリオです。その中の①は、産業革命以前と比べた世界平均地上気温の昇温量を、2℃以下に抑えることを目標にしています。④は非常に高い温室効果ガス排出シナリオのことです。排出を抑制する気候政策をしない「成り行き」シナリオは、③と④の間に入ります。

──各シナリオにおける世界平均気温の予測値はどうなるんでしょうか。

鬼頭 表を見ると、2046~2065年、2081~2100年の気温上昇量の予測値は、20世紀末と比べて、①でそれぞれ0.4~1.6℃、0.3~1.7℃、②で0.9~2.0℃、1.1~2.6℃、③で0.8~1.8℃、1.4~3.1℃、温室効果ガスの排出量が衰えることなく続く、④の高位参照シナリオでは、1.4~2.6℃、2.6~4.8℃となり、21世紀を通じて上昇し続ける可能性が高くなっています。

 こうしたことから推察されるのは、21世紀半ばに達するまでの今後数十年間は、シナリオ間による気候の変化の幅は重なり合って有意な差は見られないものの、21世紀中頃以降は、シナリオによる違いが顕著に現れるということですね。

気温の上昇によって生じるさまざまなリスク

──気温が上昇することで、どんなリスクが生じるんでしょうか。

鬼頭 IPCC第5次評価報告書では、水、生態系、沿岸、海、食料、都市、農山漁村、経済、健康、安全保障、貧困のそれぞれの分野ごとに、リスク及び適応の可能性について評価しており、「アジアにおける主要なリスク」は、図のようになっています。右端の棒グラフは、現在、近い将来、長期的将来の3つの時間枠それぞれのリスクの程度を表し、斜線部分は適応によってリスクを減らせることを示しています。

 まず①ですが、気温が上がるに伴い、極端な高温現象の頻度、継続時間、大きさが増え、熱ストレスが増える可能性が非常に高いと予測され、暑熱の影響で死亡するリスクや熱中症の患者が増加することが懸念されます。現在、既に中程度のリスクが生じており、適応策をしない場合、近い将来、中程度より高いリスクとなり、今世紀末には、非常に高いリスクが生じることが予測されるわけです。

──②と③については、どうでしょうか。

鬼頭 まず②ですが、アジアでは、雨季を通した期間の総降水量が増える可能性が高くなるとともに、極端な降水現象が強度と頻度共に増す可能性が非常に高いと予測されます。

inoti129_rupo_9 これは、洪水を増加させ、インフラや住居に対し、広範な被害をもたらすリスクとなり、適応策をとらないと、現在ないし近い将来には中程度のリスクが生じると考えられます。

 次に③ですが、もともと雨の少ない期間の雨量がもっと減り、短い期間により多い雨が降ると予測されます。また、融雪期間が早まることで、農業などの水の需要期に十分な量の水を供給できなくなる可能性があるだけでなく、気温上昇によって蒸発量が増えるため、干ばつが起こる危険性が増し、食料不足が増大することが危惧されます。日本で干ばつが話題になることは少ないですが、アジアを含め世界では影響を受ける人たちが多いんです。

気温の上昇を2℃未満に抑えるには

──待ったなしの状況であることがよく分かりました。地球温暖化を防止し、気候変動を緩和していくには、どうしたらいいんでしょうか。

inoti129_rupo_12鬼頭 気候変動を引き起こしている第一の原因である、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出を削減することに尽きます。二酸化炭素は、長期にわたって大気中に蓄積し、世界中に広がるものなので、二酸化炭素の排出を効果的に削減するために、どうしても欠かせないのが“国際協力”です。

 人類による二酸化炭素の累積総排出量と世界平均気温変化は、ほぼ比例することが分かっています。そのため、不確実性の幅を考慮し、66%を超える確率をもって、産業革命以前に比べて、世界平均地上気温の上昇を2100年時点で2℃未満に抑える(「パリ協定」を参照)には、二酸化炭素累積総排出量を3兆4,000億トン以下にする必要があります。

 しかし、1870年から2018年までの総排出量が約2兆2,000億トン、現在の1年間の排出量が約420億トンなので、この排出量が続くと仮定すれば、あと30年、つまり2050年までには上限に達してしまうことになります。

inoti129_rupo_10──二酸化炭素の排出量をどれだけ抑制すれば、気温の上昇を2℃未満に抑えられるんでしょうか。

鬼頭 そのためには、2050年に、2010年比で温室効果ガス排出量を40~70%削減した上で、2100年には排出をゼロかマイナスにしなければなりません。そしてこれを実現するには、エネルギー効率の急速な改善と低炭素エネルギー(再生可能エネルギーなど)の供給比率の大幅な増加、さらには二酸化炭素の固定・貯留が不可欠です。

 2030年までの早い段階で二酸化炭素の排出を削減しないと、それ以降、もっと多くの二酸化炭素排出の削減が必要になり、多くのリスクを将来世代に残すことになるわけです。

ライフスタイルを転換し、温室効果ガスの大幅削減へ

──お話を伺い、私たち一人一人ができるだけ二酸化炭素を出さないよう、ライフスタイルを転換していく必要があると痛感しました。

鬼頭 おっしゃる通りです。それに加えて、今私たちがなすべきことは、地球平均の気温上昇が2℃、3℃、4℃になったとき、地球や社会に一体何が起こるのか、経済評価を含めさまざまな分野で、その影響を定量的に明らかにしておくことだと思います。そして、そうした影響に適応できるのかどうかを、早急に検討すべきです。

 世界平均で4℃上昇といった人類史上にない昇温の世界に生きるよりは、当面経済的に苦しくなっても、あるいは、今より多少不便な生活になっても、温室効果ガスを大幅に削減する方が、結局は得をすることになるのではないかと思います。2020年8月8日、インターネット通話により取材)