A 投票を「公務」ととらえ、自己利益だけでなく、他の人びとや生物のことも考えることが大切です。
軍事力に頼らない安全保障を実現するには、環境破壊と奪い合いを招く地下資源に頼った生き方から、循環型の地上資源を活用する生き方へ変える必要がある──先月号の当欄で、そう述べました。では、それを民主主義社会で実現させるには、どうすればいいでしょうか?
それは、「有権者一人ひとりが、自己利益の追求ではなく、良心の命ずることを『意見表明』や『投票』などの民主的ルールに則って行うこと」(*1)です。
憲法学には、「選挙権二元説」と呼ばれる考え方があります。選挙権には2つの側面があり、「国政への参加を国民に保障する『権利』」(*2)としての側面と、選挙人として議員を選ぶ「公務」(*3)としての側面があるということです。
この考え方に従えば、選挙では、自分の利益だけを考えるのではなく、公務として他の人々の利益も考えて投票することが求められます。そして、そうした人びとが増えれば、民主主義のあり方が、利己的な欲望追求型の民主主義から、他の人びとの利益にもなる民主主義へと変わっていくのです。
民主主義が適切に機能するには、人々が同じ思いを持って連帯し、倫理的な課題を共有しながら政治的な課題に向き合うことが必要(*4)です。その必要性を満たす源こそが宗教(*5)なのです。だからこそ生長の家では、すべての人々や生物を神の生命、仏の生命として拝む生き方を広めて、良心(神の御心(みこころ))の命ずることを、政治権力を使って“上から”行うのではなく、「意見表明」や「投票」などの民主的ルールに従って“下から”行うように努めています。
公務として投票するといっても、自分の考えと一致する政策を訴える政党がなかったり、候補者の選択肢が限られていたりする場合があります。そのような場合には、“立憲主義の尊重”“軍事力より環境問題の解決や対話による平和を優先”などを基準に、考え方が自分に最も近い政党や候補者を選ぶことをおすすめします。(生長の家国際本部国際運動部講師教育課)
*1 生長の家総裁・谷口雅宣監修『“人間・神の子”は立憲主義の基礎 』69〜70ページ、生長の家刊*2、3 芦部信喜著『憲法 第六版』261ページ、岩波書店刊
*4、5 中島岳志、島薗進著『愛国と信仰の構造』182ページ、集英社新書刊