A 憲法で権力をしばり、国家を運営するあり方のことです。

hidokei87_kenpou 日本は法律で国を治める「法治国家(ほうちこっか)」です。そのため、国会で作られた法律は私たち国民に対して“あれをしてはいけない”“これをしてはいけない”と、命令したり禁止したりします。憲法は、そうした法律の“親分”のようなものだから、同じように国民に対して命令や禁止をする──それが憲法の役割だと思っている方は少なくないでしょう。

 憲法も法律と同じように命令や禁止を含みます。しかし、その相手は国民ではありません。国家権力です。つまり憲法とは、国民が国家権力をしばるためのものであり、決して国家権力が国民をしばるものではないのです。

 では、なぜ憲法によって権力をしばる必要があるのでしょうか? それは、国家が権力を濫用(らんよう)し、自分たちに都合のいい法律を作って、国民の権利や自由を不当に制限するのを防ぐためです。

 たしかに、法律は国民の権利や自由を制限します。しかし、憲法は、その法律を作る国家権力をしばります。この仕組みがなければ、権力の都合に合わせて法律が制定され、国民の権利や自由を不当に侵害できてしまうからです。たとえば、政権与党が自分たちを批判する言論や集会を禁じることができるような法律を自由に作ることができてしまうのです。

 このように、憲法で権力をしばり、国家を運営するあり方を「立憲主義(りっけんしゅぎ)」と呼びます。権力者が国民を好き勝手に支配してきた過去への反省から生み出され、今では日本や欧米諸国など多くの国で採用されています。

 立憲主義の特徴は二つあります。一つは、すでに述べた国民の権利と自由の保障、つまり「基本的人権の保障」です。もう一つは、人権保障のために権力の濫用を防ぐ「権力分立制(けんりょぶんりつせい)」です。フランス人権宣言第16条には、“この二つが定められていない社会は憲法を持たない”と規定されています。すなわち、憲法を憲法たらしめている重要な柱が立憲主義の考え方なのです。(生長の家国際本部国際運動部講師教育課)