T.T.さん T.M.さん夫妻は、昨年(2019)11月に20坪の畑を借りて家庭菜園を始めた。様々な野菜を育てる中で、自然界には循環があり、秩序があることを強く意識するようになったという。そうした自然によって育まれる野菜に感謝の思いが湧き、より幸せを感じていると話すお二人に、食の大切さについて聞いた。(取材●長谷部匡彦<本誌>)
──お二人が畑で家庭菜園を始めたきっかけを教えていただけますか?

畑で収穫した赤紫蘇ときゅうり。「畑で収穫したきゅうりは、歯応えがあって美味しいです」
Mさん もともとベランダ菜園をしていたのですが、手狭になってしまい、「いつか畑をやりたいね」って話をしていたんです。
Tさん 昨年(2019)10月の私の誕生日に、ドリームマップ(*1)をまねて将来の夢をノートに書き留めたんですね。そのなかに「いつか畑を始める」と書いたら、その3時間後に妻の父の友人の紹介で、「畑をやらないか」って話がきたんです。夢を書いた当日に願いが叶ったことには驚きました。
Mさん 初めて畑に行ったときは、何から手をつけていいのか分からなくて、ただ草抜きをしていました。すると、隣の畑の方から「鍬(くわ)で土をひっくり返して、天地返しをするといいよ」と、アドバイスをもらいました。天地返しをすることで、抜いた草などの有機物が土とよく混ざり、それらが微生物に分解されることで、野菜が元気に育つ団粒構造のふかふかの土が出来るそうなんです。
Tさん その後、種を蒔いて発芽するのに適した温度があることや、蒔いた後も3、4日は水を切らしてはいけないなど、生育環境が重要だということを知りました。野菜を育てるには、人の力だけではどうにもならず、目に見えない自然の力が働いていることを実感しました。また、植え付けの時期を野菜図鑑で調べるようになったので、野菜の収穫時期も分かるようになりました。家庭菜園を始めるようになってからは、野菜を買うときも、旬のものを選ぶようになりましたね。
Mさん 時折、近隣の畑をしている方たちから野菜を頂くこともあるんです。頂いた野菜は、作った方の顔が分かるので安心感もあり、とても幸せを感じます。
栄養価が高まる保存食
──旬の野菜を選んだりすること以外に、お二人が食べ物について心がけていることは?

「畑の家庭菜園では初心者なので、何を植えたのか記録を残すことが大事だと思い、菜園日記をつけ始めました」と、Mさん
Tさん 保存食を作っていることです。昨年の4月に立ち寄った道の駅で、切り干し大根が販売されているのを見て、私たちでも作れるかもしれないと思ったんです。ネットで調べてみたら、カットした野菜を干すだけだと分かって、大根や人参、ゴボウから挑戦してみました。最初は洗濯ばさみをアルコール消毒して、そこにカットした野菜を吊り下げてみたんです。
Mさん 思いのほか上手くできたので、干し網も購入しました。干したゴボウはすごく甘くなって、そのまま食べても美味しかったですね。干し野菜は栄養価も上がるので凄いですよね。干したゴボウや人参は、味噌汁の具材などにも手軽に使えるのが嬉しいです。
Tさん ただ、果物を干すと、味はとても美味しいんですが、見た目が変色してしまうんです。それで、市販されているドライフルーツのようにできないかと調べてみたら、電子レンジで水分を飛ばすことで、見た目が綺麗になると分かりました。でも、肝心の栄養価が下がってしまうので、それだと本末転倒なので止めました。
Mさん 他にも麹を買ってきて、塩麹や味噌、甘酒を作ったりしています。それから今年の5月には、畑で収穫したニンニクから黒ニンニクを作りました。使っていない炊飯器の内釜に竹ざるなどを敷いて、その上にニンニクを置いて布巾をかけ、10日から2週間ほど保温するだけで出来るんです。黒ニンニクがとても簡単に出来たのには驚きました。抗酸化作用があり、免疫力を強化してくれると言われていて、ひと手間加えるだけで栄養価が上がるなんて凄いですよね。
不調の原因になる食品
──もともと食品の栄養などに興味があったのですか?
Tさん 大学生だった21歳の頃、辛い刺激物ばかり食べていて、胃腸炎になってしまったことがあったんです。何も食べることができなくなってしまい、水を飲んでも吐いてしまって3日間点滴を打ちました。1週間経って、ようやくお粥が食べられるようになったんですが、それからは、身体に良い物を食べようと思うようになりました。

黒ニンニク(画像提供:T.T.さん)
Mさん 私は社会人になり、健康を意識するようになってから食事に気をつけ始めました。調味料を減らして薄味にしたり、栄養バランスの整った食事を摂ることを心がけるようになったんです。
Tさん 調味料に関しては、愛知県の三河地方にある蔵元(くらもと)の知り合いから、みりん風調味料の注意点について教えてもらったことがあります。もち米と麹、焼酎から造る本みりんと比べて、値段が安いみりん風調味料は、水飴や食品添加物などが使われているそうなんです。工業的に生産された水飴は、見た目を綺麗にするために極度に精製されているので、体内に入るとミネラルやビタミンと結合してしまい、頭痛などの心身の不調や細胞の老化を招いてしまうらしく、その話を聞いた時は驚きました。
Mさん 結婚してからは、精製されている白砂糖も使わなくなりましたね。お菓子作りや料理をするときには、きび砂糖のほか、はちみつ、本みりんなどを使うようになりました。
バランスの良い食事が健康な身体をつくる
──食品以外に何か気をつけていることはありますか?
Tさん 食べ過ぎも良くないですよね。大学4年生の時に、外食が多い生活が続いて、1年で10キロ太ってしまったことがあったんです。食生活を改善しようと思い、就職して一人暮らしを始めてからは、自炊を始めました。適量を作って食べるようになったら、1年で元の体重に戻すことができました。それまでは満腹を感じても食べていましたが、体調に合わせて必要な分だけを食べて、食べられない場合は次の食事に回すようになりました。食事も“足るを知る”(*2)ことが大切なのだと思います。
Mさん Tさんは、出張の時は外食が多かったので、出張から帰って来るたびに、いつも「お腹が重たい」と言ってました。
Tさん 外食は、どうしても油物が多くなってしまい、それが続くと、お腹の調子が悪くなり、疲れやすくなって頭痛になることも多かったですね。
Mさん それで、出張から帰ってきた日の食事は、玄米を出すようにしたんです。玄米を食べたTさんが、なんだかホッとしたような表情をしていたのが印象的でした。それから、出張の際は、玄米入りおにぎりのお弁当を持っていってもらうようにしたんです。
Tさん 玄米は食物繊維が豊富で整腸効果も高く、糖の吸収がゆるやかになるので、ダイエット効果が期待出来るそうです。でも、玄米だけだとお腹がゆるくなってしまいますし、白米だけだとお腹が重たくなってしまうので、体調に合わせてバランス良く食べるように心掛けています。
──食事に気をつけているお二人にとって、食べることとは、どのようなことなんでしょうか?
Tさん 畑をするようになって、自然の力で育つ野菜は、神の恵みなんだと思えるようになりました。旬の野菜を頂くことで、感謝の気持ちが湧いて、心も身体も幸せになります。生長の家の神示(*3)である「生長の家の食事」のなかに説かれている「食事は自己に宿る神に供え物を献ずる最も厳粛な儀式である」という教えを実感しています。
Mさん じつは今、妊娠をしていて、12月に生まれてきてくれる子どものためにも、身体に良いものを食べるようにしています。子どもが大きくなったら畑で遊ばせたいですし、野菜が畑でどのように出来るかを知って、食べ物の大切さを感じて欲しいですね。
*1 夢や希望を写真やイラストなどで可視化し、具体的にイメージすることで目標達成に向けた行動につなげるためのもの
*2 不足しているものに注目するのではなく、すでにあるものに注目する生き方のこと
*3 生長の家創始者・谷口雅春先生に下された言葉