予備校の事務職員として働く安田真寿美さんは、就職する以前、アルバイトで自信をなくしかけた時があった。そのことが、物事の明るい面に心を振り向ける「日時計主義」の大切さに気づかせてくれた。

安田真寿美さん 神奈川県・28歳・会社員 「『日時計日記』に良かった出来事などを書き留めています。時折、見直すと笑顔になれるんです」 取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●遠藤昭彦

安田真寿美さん
神奈川県・28歳・会社員

「『日時計日記』に良かった出来事などを書き留めています。時折、見直すと笑顔になれるんです」

取材●長谷部匡彦(本誌)
撮影●遠藤昭彦

「人は誰しも誰かに支えられて生きています。たとえ些細なことでも、誰かに支えられているということを思い出すと、自ずと感謝の気持ちが出てくるんですよ」

 家族や友達、職場の人たちなど、自分を支えてくれている多くの人たちに心を向けることで、気持ちが明るくなり、人生が好転していく──。そんなきっかけを得たときのことを、安田さんは振り返る。 

暗い気持ちも明るい気持ちも私が生みだすもの

 平成26年、安田さんは専門学校を卒業後、就職先が決まらずにいたとき、駅ビルの惣菜店でアルバイトを始めた。

 1カ月が過ぎた頃から、商品の袋詰めや金銭の受け渡しを素早く行うよう、ある先輩から何度も注意されるようになったという。

「自分は他のスタッフさんと変わらないスピードで行っていると思っていたので、『なんで私だけが注意されるのだろう』って、思い悩むようになり、気持ちが落ち込みました」

 注意を受け続けたことで、アルバイトを続けていく自信がなくなり、辞めようと考えていることを会社に伝えた。すると意外なことに、その先輩から、「頑張っていたのに辞めたらもったいない」という言葉が返ってきた。

「後日、先輩から『安田さんなら、お客様のためにもっと素早い応対ができるはずだから』と言われて、私の可能性を信じてくれていたんだと知りました。繰り返し注意を受けたことで、先輩に対して苦手意識を持ってしまい、自分で暗い気持ちをつくってしまっていたんです」

 太陽の出ている時刻のみを記録する日時計のように、日々の生活の中で、人や物事の明るい面を思い出し、記憶するという、生長の家で学んだ「日時計主義」の生き方を実践できていなかったことに気がつき、アルバイトを続けることにした。

「それからは指摘を受けても、私を向上させるために、アドバイスをしてくださっているんだと思うようになりました。すると感謝の思いが湧き、自然と明るい気持ちになれたんです」

 良い言葉を使い、明るい表情を心がけ、善いことを思うようにしていくことで、職場の人間関係も良くなり、周囲から頼りにされるようになったという。

明るい心でいたら道が開けてきた

 アルバイトを約1年半続けていた頃、ふと手にした求人雑誌に掲載されていた予備校の事務職員の募集に目が留まった。心惹かれるものを感じて応募すると、トントン拍子に採用が決まり、平成27年10月から契約社員として働き始めた。

「インターネットを使って、友人とその日にあった良かったことを報告しあっています。お互いに喜びを共有できるのが嬉しいですね」

「インターネットを使って、友人とその日にあった良かったことを報告しあっています。お互いに喜びを共有できるのが嬉しいですね」

「授業に参加できなかった学生のため、ネット上で視聴する授業の録画システムの調整と動作確認などを行っています。仕事を無事終えるたびに『何もないことがありがたい』と、感謝の思いが湧いてくるんです。学生のみなさんのお役に立つことに関われて、やり甲斐を感じています」

 安田さんは正社員を目指して、2年目から正社員登用試験を受け始め、5年目の令和2年に合格することができた。

「試験の度に上司から励まされ、模擬面接など職場の協力を得ることができました。これも日頃から、感謝の思いを持って明るい雰囲気で仕事をしていたお陰かも知れません。それから『日時計日記』(*1)にも感謝の思いを書くようになったことで、さらに喜びが深まるようになりました」

 明るい心を持つことで、新たな道が開けたと話す安田さんが、いま大切にしているのは、生長の家で説かれている「人間は神の子である」という教えを深く学ぶこと。

「まず、自分自身を素晴らしい神の子として認めることが大切ですね。そして、他の人たちも素晴らしい神の子として認めることで、他の人を変えようとはしなくなるんです。現象的な世界の奥にある、『神様が創られた本当にある世界は、善一元の愛の世界』なので、お互いに認め合うことができるようになれば、自分を害するものもなくなり、生かし合いの明るい調和した世界が現れてくると思います」

*1 太陽の出ている時刻のみを記録する日時計のように、日々の生活の中で、人や物事の明るい面を記録する日記。生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修。生長の家刊
*2 生長の家のお経の総称