私の職場に、大変困った先輩社員がいました。ある年の4月、その方も私も人事異動があり、上司と部下になりました。

 どのように困った上司なのかというと、部下を指導する態度が居丈高なのです。事務所中に響き渡るような大きな声で、しかも皆の前で指導するものですから、ほとんどの人がすくんでしまいました。指導と言うより怒っていると表現したほうが正確でしょう。実際、怒っている場合がほとんどでした。

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 私もよく怒られました。部下の前でも、他部署の人が聞いていても、大きな声で長々と怒られました。それで当初は、私もすっかり萎縮してしまって、「苦手な上司」として接していました。

 しかし、生長の家の教えを学んでいた私は、「この人がこんなに攻撃的なのは、認めてほしいとか、与えられている愛が足りないからなのではないだろうか」とふと思ったのです。そして「そうだ。上司の実相を観る私の力が足りず、愛が足りないから、苦手な上司として現われているだけなのだ」と確信したのでした。
* 神によって創られたままの完全円満なすがた

 そのことに気づいて、上司の実相を観ようと努めるようになってからは、その方が私に何を伝えたいかを、恐れることなく冷静に聞くことができるようになったのです。

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 そんなある時、その方と2時間近くも皆の前で激論したことがありました。周りで聞いていた人たちからすると、私がずっと怒られていると思ったらしく、後から「大変だったね」と声を掛けられましたが、私自身は、ただ真剣にその方が言わんとしていることを理解しようとし、私の考えを真剣に伝えていただけなので、「皆の目にはそんな風に映っていたのか」と思っただけでした。

 その後、その方から「今日の議論で納得できた。忙しい中で2時間も時間を割いてしまって悪かったね」と声をかけていただきました。

 すると翌年4月、人事異動でその方は配置換えとなりました。他の人たちや部下は、大変安堵していたようですが、私は素直な気持ちで、その方の次の職場での活躍を祈ることができました。

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 「ただ実相のみがある」という生長の家の教えを実践することができたとき、そのステージを卒業して次のステージに進むことができ、後任の方とは大変馬が合う上司と部下になることができたのです。

 生長の家の教えに徹すれば、善一元の世界が現われることを実感した体験でした。

K.K(生長の家地方講師)
昭和32年、愛知県生まれ。生長の家相愛会愛知教区連合会長。名古屋市在住。平成8年から生長の家地方講師。趣味は映画鑑賞等。