A「国政における最終的な決定権は、国民にある」ということです。
日本国憲法は前文で、「主権が国民に存(そん)することを宣言し」と規定し、1条で、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基(もとづ)く」としています。この国民主権は、基本的人権の尊重、平和主義と並ぶ、日本国憲法の三大原則の一つですが、「主権は国民にある」とは、どういう意味でしょうか。
まず、「主権」という語は多義的で、次の三つの意味があります。①国家権力そのもの(統治権)、②国家権力の最高独立性(対内的最高性と、対外的独立性)、③国政における最終的な決定権または権威。そして「主権が国民に存する」という場合の「主権」は、③の意味で使われています。
戦前の大日本帝国憲法(明治憲法)は、天皇を中心とする統治機構が採用されていました。戦後、日本国憲法で「国民主権」が謳(うた)われたということは、国政における最終的な決定権が、天皇から国民へと移されるとともに、近代(立憲主義的)憲法の根本理念である「個人の尊重」が承認されたことを意味しています。
「国民主権」の二つの側面
では、「国政における最終的な決定権は国民にある」とは、具体的にどういうことでしょうか。そこには、権力的な要素と、正当性という要素の、二つの側面があると言われています。
権力的な要素とは、「国民は主権の最終的な行使者である」ということです。この場合の国民とは、具体的には有権者であり、「国会の両議院の選挙」(43条1項)や「憲法改正国民投票」(96条)などの場面で、その権利を行使することを指します。
正当性という要素とは、「国家の権力行使を正当化する究極的な権威は、国民にある」ということです。日本国憲法が、国会を「国権の最高機関」(41条)と規定しているのは、国民の直接選挙によって選ばれた代表者で構成されているからです。そして、国会決議をはじめとして、国政の様々な決定に正当性を与えているのは、主権者である国民なのです。