A 国家権力を分散させ、相互に抑制と均衡を働かせる仕組みです。
人間が生まれながらにしてもっている権利(人権)を守るため、憲法によって国家権力を制限する考え方を立憲主義と呼び、この立憲主義に基づいた憲法には、「人権保障」と「権力分立(ぶんりつ)」という2つの柱があることは、本連載の2回目で触れました。
そのことを端的に表しているのが「フランス人権宣言」(1789年)の16条にある、「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもっていない」という文言です。たとえ「憲法」と名のつくものがあっても、「人権保障」と「権力分立」が定められていなければ、それは憲法とは言えないということです。では、なぜ憲法にこの2つが必要なのかといえば、人類の歴史を振り返るとき、国家権力は、「人権の侵害」と「権力の独裁」という過ちを犯してきたからです。
「三権分立」の意味とは何か
国家の統治権は、法とのかかわりにおいて、立法権(法を作る権力)、行政権(法を執行する権力)、司法権(具体的な争訟(そうしょう)に法を適用し、裁定する権力)の3つに分けられます。ところが、もし「法を作るもの」が、同時に「法を執行するもの」となった場合、好き勝手な法の運用がまかり通ることになります。さらには、「法を作るもの」と「法を執行するもの」を分けたとしても、「法が正しく適用されているかを裁定するもの」がいなければ、人権が侵害される恐れがあります。
そうした権力の濫用(らんよう)や独裁が起きないよう、1人あるいは1つの機関が2つ以上の権力の担(にな)い手になってはならない、というのが三権分立です。
日本国憲法でも、この三権分立が採用され、権力が暴走しないようにしています。国民代表機関としての国会を「唯一の立法機関」とし、行政権を内閣に、司法権を裁判所に帰属させているのです。そして、三権が相互に抑制と均衡(きんこう)を働かせるための、様々な仕組みがあります。次回は、その仕組みについて、さらに見ていきます。