生徒を連れて海外で環境研修
私は福島県のある私立高校で英語の教師を務めています。福島県と言えば、2011年に発生した東日本大震災による津波で、福島第一原発が大きなダメージを被り、未曾有の大事故が起きたことが、今なお記憶に新しいところです。
それ以降、福島県では脱原発に向けた動きが盛んとなり、内堀雅雄知事は、昨年(2023)、世界に先駆けて脱原発を実現させたドイツを訪れ、「再生可能エネルギー比率の拡大が福島県の使命」と語るなど、環境政策を熱心に進めています。
そうした政策の一環として、福島では、県からの補助金によって高校生の海外環境研修が積極的に進められてきました。その目的は、若い高校生たちが海外を訪問して、原発事故の現状を伝えるとともに、海外の環境政策を学び、県が進めている環境政策に資するということです。
私は英語教師のため、通訳も兼ねて生徒たちと一緒に、ここ10年でオーストラリアに3回、中華民国に1回、さらに、昨年はカナダも訪問しました。
各訪問先では、原発事故という大惨事の起きた福島の人の生の声が聞けるとあって大きな歓迎を受け、生徒たちも感激していました。さらに、一度事故が起きてしまうと、人間の力ではどうにもできない原発の危険さを、実際の体験を交えて訴えたことの反響は大きく、生徒たちは確かな手応えを感じたようです。
生徒たちはまた、発表後のディスカッションで、日本では考えられないようなさまざまな意見が出ることに驚いていました。「遠慮せず、お互いの意見をはっきりと言い合った上で議論することが大切だと分かった」とか、「日本では違った意見をもっていても、周囲に気兼ねして曖昧に済ませてしまうことがあるけど、議論は、はっきり意見を述べ合ってこそ発展するものだと実感した」といった感想を述べていました。
こうしたことを若いうちにしっかりと体験できたことは、彼らの人生の大きな財産になると思います。
循環型社会を目指して
3回訪れたオーストラリアは、石炭が豊富に採れるため、電力供給の中心は火力発電で、国の方針として原発には取り組んでいないものの、国内で採れるウランを、原発を促進しているインドに輸出しているということでした。これについては、「原発の推進に寄与するようなことをしていいのか」という議論が高まっていて、原発事故に直面している私たちも大きな疑問を感じました。
一方、カナダでは東海岸に原発があるものの、西海岸は地震が多いことを考慮して、発電の多くを水力でまかなっているとのことでした。これによって低炭素の発電を実現しているようです。
このように、国によっていろいろな対応があることが分かりましたが、私は生長の家総裁・谷口雅宣先生のご著書『次世代への決断 宗教者が“脱原発”を決めた理由』(生長の家刊)を読んだことで、より脱原発への思いが強まりました。一日も早く脱原発を実現し、自然エネルギーを利用した循環型社会を目指していくべきだということを折に触れて生徒たちに伝えています。
不登校の生徒が起ち上がる
私が生長の家の教えに触れたのは、不登校を続けていた高校生のときです。熱心に生長の家を信仰する祖父と父に連れられて、練成会*に参加したことがきっかけでした。
* 合宿して教えを学び、実践するつどい
そこで「人間は神の子で、無限の力を持っている」という教えに感動し、その後、不登校を克服し大学に進学して英語の教師になることができたのです。それから私は、人生のいろんな場面で生長の家の教えを支えに生きてきました。
生徒の指導にも、生長の家の教えの通り、褒めて伸ばすことを心がけたのはもちろん、原発事故が起きてからは、谷口雅宣先生の前掲書を熟読して勉強することで、原子力の使用は止めるべきであるという強い信念を抱くようになりました。そして、生徒たちにもその思いをそれとなく伝え、特に海外での環境研修の際には、生徒たちと意見を交わし合って、自分の思いを正直に吐露しました。
すると、生徒たちとの信頼関係が深まったばかりでなく、親御さんたちから「子どもが不登校になって心配だ」といった相談を受けるようになりました。私は自分の体験を話し、「人間には無限の力がありますから、一時、後退するように見えることがあっても必ず立ち直れますから大丈夫。あわてず騒がず、お子さんを信じて見守ってあげてください」とアドバイスしました。
その中の一人、母親が保険の外交員をしていた生徒は、長年不登校を続け、家の中で暴れたりするような子でした。それに悩んだ母親から相談を受けた私は、「息子さんは素晴らしい神の子ですから、時期がきたら必ず立ち直ります。それを信じて、息子さんをしかったりせず、温かく見守って励ましてあげてください」と会うたびに言い続けました。
母親も最初は半信半疑でしたが、私の熱意にほだされて実践すると、ほどなくしてその生徒は学校に通い出しただけでなく、家庭に平和が戻ったのでした。「人間は皆素晴らしい神の子」という生長の家の教えを実感した体験でした。
後日、その母親が地元放送局のテレビ番組に出演したのを見たことがあります。息子が不登校から立ち直った体験を、涙ながらに話している母親の姿を見た時は、あまりの感動に胸が熱くなりました。
そして、これからも何か悩みの相談を受けた時には、積極的に生長の家の教えを伝えていこう、それが多くの人のお役に立つことになると、改めて思ったのでした。
生徒と献血ボランティアに参加
その一環として、生徒たちに人のお役に立つことの大切さを話し、一緒に献血ボランティアに参加したこともあります。その時、痛感したのは骨髄移植の重要さです。
多くの人が骨髄の提供を待ち望んでいることを知り、それまでは右から左に聞き流し、関心がなかったことを深く反省しました。一人でも多くの人が骨髄ドナーに登録すれば、それだけ救われる人が増えるわけで、これは大きな人助けになると分かったのです。
生徒たちも大きな関心を示してくれましたが、年齢制限のため骨髄ドナーにはなれなかったため、率先して私がドナー登録をさせていただきました。
それからしばらくして、私の骨髄の提供を受けた方から、「あなたが骨髄を提供してくださったおかげで、病から起ち上がることができました。本当にありがとうございました」という丁寧な手紙が届いた時は、自分のことのように嬉しくて心から感動しました。
聞くところによると、提供された骨髄の型がぴったり合うのは200~300分の1の確率で、「提供する人と提供される人とは、遠い昔のご先祖が一緒のため、その導きによって適合するのではないか」と言われるほど奇跡的なことなのだそうです。この話を聞いた時、いのちを頂いた神様、ご先祖様のお導きを実感しました。
これからも生徒を神の子として拝みながら、一日も早く福島第一原発の事故が収束し、脱原発が実現することを祈りたいと思っています。