さまざまな色の和紙を手でちぎりながら、それを台紙に貼って花や風景などを表現するちぎり絵。ちぎった部分の微妙なかすれが、グラデーションのようになって独特の風情を醸し出す。
ちぎり絵を始めて40年以上というベテランの石丸豊子さんは、その魅力についてこう語る。
「どんな和紙を使い、どんな絵を描くのか、あれこれ考えを巡らせているときが、一番幸せな時間です。思い通りの作品に仕上がることは滅多にないんですが、それはそれで、また楽しいんです」
代表作は、「ブレックファースト」と題する作品。木製のテーブルに敷いたランチョンマットの上に、目玉焼きや野菜サラダ、牛乳にパン、紅茶ポットや花瓶なども置かれ、楽しい雰囲気の朝食の一コマが、鮮やかに表現されている。
「これは、40歳の頃、『全国手工芸コンクールinひょうご』(〈公財〉兵庫県芸術文化協会主催)に出品して入賞した、私にとって大変思い出深い作品です。それから、ちぎり絵にのめり込むようになりましたから」
石丸さんは10代の頃、精神的に不安定になり、高校は卒業したものの、その後も体調の優れない状態が続いていた。そんな25歳のとき、母親が親戚に相談したところ、生長の家宇治別格本山(*1)の練成会(*2)に参加することを勧められ、そこで生長の家の教えに触れた。
「『人間は完全円満な神の子であり、病は心の迷いが仮に現れているだけであって本来ない』と教えられたときの驚きと感動は、今でもありありと覚えています。お陰で明るく前向きな気持ちを持てるようになって、立ち直ることができました」
その後、生長の家青年会(*3)の一員となって伝道にも励むようになり、30歳で結婚。1女を授かって幸せな結婚生活を送った。
「生長の家の教えに触れたことで、引っ込み思案だった性格も明るくなり、希望を持って生きられるようになりました。あのとき、親戚に相談してくれた母は、平成5年に70歳で亡くなりましたが、母には今も感謝の気持ちで一杯です」
結婚後、子育てなどで忙しくなり、ちぎり絵を一時やめては、また始めるということを繰り返していたが、昨年(2021)5月、SNIクラフト倶楽部(*4)に入ったのを機に本格的に再開した。
「クラフト倶楽部のフェイスブックグループに紫陽花、向日葵、柿などのちぎり絵を投稿すると、皆さんから反響があってとても励みになりました。今は、ちぎり絵の楽しさに改めて目覚めたという感じで制作しています」
そんな新境地から、どんな作品が生まれるかが楽しみだ。
*1=京都府宇治市にある生長の家の施設
*2=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践する集い
*3=12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の集まり
*4=SNIクラフト俱楽部は、生長の家が行っているPBS(プロジェクト型組織)の一つ