小田靖子(おだ・やすこ)さん│82歳│北海道伊達市 取材/佐柄全一 写真/加藤正道

小田靖子(おだ・やすこ)さん│82歳│北海道伊達市
取材/佐柄全一 写真/加藤正道

 小田靖子さん宅を訪ねると、玄関先に何点もの油絵が掛けられていた。いずれも小田さんの作品で、その中の「街並み」と題する10号の小品に目を奪われた。

「これは、市内にある絵画教室の会場の窓から見えた街並みを描いたものです。伊達市は、近くに有珠山や洞爺湖などがある観光地なので、もっと魅力ある所を題材にしたらと人から言われるんですが、こういう、どこにでもありそうな平凡な風景に惹かれるんです」 

 一軒一軒の家屋が、電信柱やテレビのアンテナ、植え込みなどとともに丁寧に描かれ、そこに暮らす人たちの話し声までが聞こえてきそうな、生活感が溢れる絵だ。

「一見、殺風景な街並みでも、よく見るとだんだん愛着が湧いてきて、街の皆さんの幸せを祈りながら描きました」

 3年前に描かれたこの作品は、教室の講師の勧めで「第10回室蘭日曜画家作品展」に出品し、NHK室蘭放送局長賞に輝いた。昨年(2021)には、同展に「オレンジのレオタードのトルソー」という作品を出品して、津田額縁店賞を受賞している。

「絵とは無縁だった私が、描く喜びを知り、賞までいただけるようになったのは、生長の家で『技能や芸術的感覚を生かした誌友会(*1)』が始まり、そこで絵手紙を描き出したのがきっかけなんです」

絵を始めるきっかけとなった絵手紙の数々。「古い作品ですが、見ると感動がよみがえります」

絵を始めるきっかけとなった絵手紙の数々。「古い作品ですが、見ると感動がよみがえります」

 子どもの頃から絵が好きなわけではなかったが、せっかくそうした誌友会が始まったのだからと、見よう見まねで絵手紙を描くうちに絵の喜びに目覚めていった。

「そんなとき、知人から勧められて水彩画を習うようになってますます絵にはまり、ついに教室に通って油絵を始めるまでになったんです。これも、生長の家で絵手紙を教えてもらったおかげです」

 小田さんは、一粒種の長男の喘息に悩んでいた30歳のときに、隣家の奥さんに誘われて誌友会に参加した。

「その頃、喘息は少し治まってはいたんですが、人間は完全円満な神の子で、子どもは神様が育ててくださるから何の心配もいらない、という話を聴いて心から安心しました。すると程なくして、喘息がすっかり消えてしまったんです」

 以来、夫婦で地方講師(*2)となっただけでなく、小田さんは平成9年から9年にわたって、生長の家白鳩会(*3)室蘭教区連合会長という要職を務め、伝道に尽くした。

「これからも信仰に励み、日々いろんなことに感動しながら、楽しんで絵を描き続けていきたいです」

 82歳とは思えない生き生きとした姿がそこにあった。

*1=生長の家の教えを学ぶ小集会
*2=生長の家の教えを居住地で伝えるボランティアの講師
*3=生長の家の女性の組織