「週に120分以上、自然の中で過ごすと、健康に良く、幸福度が高まる」

 これは、2019年、英国の研究チームが、成人2万人を対象に行った自然環境調査の報告です。

“自然環境は、どのように人間の心身に良い影響をもたらすのか”について、多くの研究が行われてきましたが、この報告は“では、一体どれくらいの時間を過ごすべきなのか”を明らかにした研究結果の一つとなりました。

hidokei175_kaisetsu_1

五感の刺激で幸福感が高まる

 
 私は現在、山梨県北杜市に在住し、森に囲まれた職場に勤務するなど、森の近くで過ごしています。

 夏の季節は、とても緑が鮮やかです。森に入って、柔らかな土の上を歩き、木に触ったり、森の香りを嗅いだり、鳥の鳴き声や川のせせらぎに耳を澄ましたり──。自然の美しさに感動するなかで、五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)は鋭敏になり、心身ともに大きく解き放たれたような気持ちになります。

 こうして自然の中で過ごすことは、近年、「森林浴」と呼ばれて、人々が遠方から訪れるなど、心や体を癒やす行動として注目されています。例えば“森の香り”で言うと、樹木からは、「フィトンチッド」と呼ばれる成分(殺菌力を持つ揮発性成分)が放出されています。

 こうした成分やリラックス効果により、休息時によく働く副交感神経が優位になるほか、血圧の低下、血中のコルチゾール(ストレスホルモン)の減少が見られ、免疫機能を高める“NK細胞”が活性化するなど、体にも良い変化が現れることが明らかになってきています。

hidokei175_kaisetsu_2

自然と人間は一つの生命

 
 では、人間の心身に影響をもたらす自然と人間は、どのような関係にあるのでしょうか。

 生長の家では、「自然と人間は本来一体の生命」と説いています。これは、唯一つ──唯一絶対の神が、無限の智慧と愛と生命をもって、宇宙のすべてをつくられたと考えるからです。人間の中にも、そして、植物や動物、鉱物を含む自然の中にも、同じ神の生命が宿っており、すべてが一体で調和しているのが本来の姿なのです。

 自然が人間にもたらしてくれる食料や生活の素材、先に紹介した感動や癒やしは、その一体の生命である自然からの恵みであり、一体だからこそ、私たち人間は自然に与え返す──つまり愛情を込めて、守り育てていく責任があると言えます。

「特集ルポ」のH.M.さんも、竹林を生かす会社経営を行う中、美しい光景に感動して、「山が喜んでいるように感じられた」と語っています。こうした自然との一体感が、より環境問題を改善する意欲を深めているのではないでしょうか。

hidokei175_kaisetsu_3

自然との一体感を深めよう

 
 皆さんも、自然との一体感を深めるため、積極的に自然と触れ合っていくことをお勧めします。

 私は、以前、森林保全に興味を持ち、休日に森林ボランティア活動を行って、同じ興味を持つ多くの仲間に出会うことができました。このような活動等を通して森の整備や植樹を体験するのも一つの方法です。先述のHさんもイベントを通して、環境を守る大切さを伝えていました。

 また、山や森に行ったり、近くの公園や駅に向かう道、自宅の庭を散策したりするなど、皆さんが使える時間に応じて、自然観察を行うことも、自然と触れ合う大切な体験です。

 こうした行動を通して、皆さんが、さらに、すべてが一体である大きな世界へと意識を拡大し、人々の幸福を願い、自然を守り育てていく力を発揮されていくことを確信しています。

hidokei171_kaisetsu_3

………………………………………………………

吉柴康雄(よししば・やすお)
生長の家本部講師

生長の家国際本部勤務。「最近、森づくりの一環として、職場の建物周辺に生えてきた広葉樹の苗木を、森の中へせっせと移植しています」