高橋咲千子(たかはし・さちこ)さん│37歳│仙台市青葉区
取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘
ピアニストの高橋咲千子さんは、演奏活動を行う傍ら、仙台市青葉区の閑静な住宅街にあるピアノ教室「サミュゼピアノ研究会」を主宰して8年。5歳の子どもから88歳のお年寄りまで、40人の生徒を抱える人気教室になっている。
「研究会と言うと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、全然そんなことはありません。サミュゼとは、フランス語で“楽しい”という意味で、音楽を楽しんでもらいたいという思いで名付けました。生徒の皆さんにその思いが伝わっていれば嬉しいですね」
そう話す高橋さんのピアノ教室では、毎年夏に発表会が、年末にはクリスマス会が開かれる。これらのイベントも、「音楽を楽しむ」をモットーに、ピアノのほか、生徒の家族も参加してギターやフルートなどを演奏したり、歌を歌ったりする。
「こうしたイベントを通し、音楽とは楽しむものであると分かっていただければと思いますし、家族の絆が深まればいいなとも思っています」
幼稚園の先生が弾くピアノの音色に惹かれて、ピアノを始めたのは5歳のとき。持ち前の才能に努力も加わってめきめき腕を上げ、1年後には母親のまり子さんが、世界的に有名なスタインウェイのグランドピアノをプレゼントしてくれた。
「決して裕福な家庭ではありませんでしたが、母は、一人娘の私に“良い音”でピアノを弾かせたいという想いで購入してくれたんです。今の私があるのは、母のおかげだと感謝しています」
東京都立芸術高校、日本大学芸術学部、同大学研究科でピアノを専攻するなどピアノ一筋の人生を歩み、日本ピアノコンクールでは全国第一位に輝いた。その後、毎年自身のリサイタルを開催したり、日芸コンサート等、さまざまな演奏会に出演し、演奏家としても活躍している。
26歳で結婚、一女一男を授かって、子育てに「子どもの神性を拝む」という生長の家の教えを生かしている。また、まり子さんに勧められ、平成26年に仙台でピアノ教室を開き、現在に至っている。
「子どもの頃、母から伝えられた『人間には無限の力がある』という教えを支えに、ここまでやってきました。ピアノ教室の生徒にも、よいところを褒めて伸ばす生長の家の教育法を実践しています」
昨年(2021)5月、まり子さんが65歳で急逝し、大きなショックを受けたが、その直後、自身のピアノリサイタルがあった。ピアノという自己表現する手段を遺してくれたまり子さんに感謝し、「人間のいのちは永遠生き通し」という教えに救われて、立ち直ることができた。
「母は、『あなたは音楽を通して神の世界を体現しているんだよ』と言ってくれていました。私がピアノを弾き続けることが、この道に進ませてくれた母が最も喜ぶことであり、供養にもなると思っています」
高橋さんは、何かあるたびに「ママ見てて!」と、霊界のまり子さんに呼びかけ、心の安らぎを得ているという。